小樽市銭函の市道で7月、海水浴帰りの女性4人が飲酒運転の車にひき逃げされ、3人が死亡、1人が重傷を負った事件で、被害者遺族らが20日、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)などの罪で起訴された札幌市西区の飲食店従業員海津雅英(かいづまさひで)被告(31)に対し、より刑罰の重い同法違反の危険運転致死傷罪を適用するよう札幌地検に要請した。
死亡した被害者3人の父母と「北海道交通事故被害者の会」の前田敏章代表(札幌市)ら7人が同日、地検を訪れ連名の要請書を提出するとともに記者会見した。
地検は、事故の直接の原因がスマートフォンを操作しながらの脇見運転だったことや、海津被告が事件後に近くのコンビニエンスストアまで運転していたことなどから、飲酒の影響で「正常な運転が困難な状態」であることを条件とする危険運転致死傷罪の適用を見送っていた。
要請書では「飲酒によって注意力や判断力が減退したからこそ、普通では考えられない長時間の脇見をした」などと指摘し、訴因変更を求めた。
前田代表によると、地検幹部は「検討したい」と応じたという。(北海道新聞Web)
海津雅英容疑者の供述によると、「スマホを7~8秒操作していた」とのことである。
確かに運転中の7~8秒は確かに異常に思える。
これが飲酒による影響と判断できれば「危険運転致死傷罪」を適用できるのかもしれないが、検察はもう既に「自動車運転処罰法違反(過失致死傷)」と判断を下している。
つまり、スマホ操作については既に検討済みなのである。
「自動車運転処罰法違反(過失致死傷)」は昨年制定された新しい法律で、「危険運転致死傷罪」と「自動車運転過失致死傷罪」の中間に位置する法律である。
「危険運転致死傷罪」なら1年以上20年以下の懲役。
「自動車運転過失致死傷罪」なら7年以下の懲役か100万円以下の罰金。
これまでは、「危険運転致死傷罪」の適用要件が厳しすぎるのであまり適用されず、「自動車運転過失致死傷罪」となるケースがあった。
被害者らの意見により悪質な運転に対してより重い刑罰を科せる法として「自動車運転処罰法」が出来た。
なので、制定の経緯と海津雅英容疑者の供述から「自動車運転処罰法違反(過失致死傷)」は適当ではないかと思う。
それにしても、検察が一度起訴した内容を変更することがあるのだろうか。
そのような事例があるかどうか調べてみた。
岡山県矢掛町の男性=当時(65)=が昨年3月、兵庫県たつの市で車にはねられ死亡した事故の公判で、被害者参加制度を利用した妻(62)の主張により、検察側が起訴状の内容を「被害者が車道を歩いていた」から「歩道を歩いていた」と変更していたことが27日、分かった。
妻の弁護士によると、制度導入で認められた初公判前の捜査記録開示が生かされた形。被害者の主張で起訴内容が変更されるのは珍しいという。
弁護士によると、夫婦はコンサートの帰り道にはねられ妻も重傷を負った。神戸地検は昨年12月、自動車運転過失致死傷罪で運転手の女性(27)を起訴した。
しかし、起訴状を閲覧した妻は「事実とは違う」と神戸地裁龍野支部の初公判で起訴状の内容の変更を請求。補充捜査を申し入れた。妻が立ち会い実況見分などをした結果、検察側は今月23日の第2回公判で起訴内容を変更した。(時事通信より2009年4月27日)
この事例は自動車運転過失致死傷罪という点、被害者の要求によって起訴内容が変更された点で小樽市飲酒ひき逃げ事件に近い。
しかし、「事実とは違う」という理由で起訴内容が変更されているので、刑罰の変更とは若干異なる。
小沢一郎・民主党幹事長の元公設第1秘書、大久保隆規被告(48)について、東京地裁(登石郁朗裁判長)は21日、既に公判中の西松建設巨額献金事件の起訴内容に、土地購入を巡る事件を加える「訴因変更」を認める決定をした。(日本経済新聞Webより2010年5月21日)
こちらは刑罰の追加。新たな罪が見つかったことによる結果なので、これも刑罰の変更ではない。
被害者の要求で刑罰を重くするのは事例がないようだ。
過去の判例や慣習に基づいて判断する検察官が多いので、この要求が通ることはないと思う。
北海道交通事故被害者の会
内閣府のホームページに詳細が載るぐらい認められた団体のようだ。
参考URL: http://www8.cao.go.jp/hanzai/dantai/shosai1/j-19.html
住所:
〒060-0001
北海道札幌市中央区北1条西9丁目 ノースキャピタルビル4階
代表者名:
前田 敏章
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