時事通信より
バスの車内で女性の尻を触ったとして、東京都迷惑防止条例違反罪に問われた中学校教諭津山正義被告(30)=起訴休職中=の控訴審判決が15日、東京高裁であった。河合健司裁判長は罰金40万円とした一審東京地裁立川支部判決を破棄し、無罪を言い渡した。 一審判決は「右手で携帯電話を操作しながら左手で痴漢することは、不可能ではない」と判断していた。 河合裁判長は、津山被告が左手でつり革をつかんでいる様子が車内のカメラ映像で確認できると指摘。被告がリュックサックを体の前に提げていたことから、「被害者はリュックが尻に接触したのを、故意の痴漢と勘違いした疑いが残る」と述べた。 判決後の記者会見で津山被告は、取調官がうそをついて自白を迫ったり、「認めないなら出さない」と言ったりしたと述べ、痴漢事件での取り調べ録音・録画(可視化)の必要性を指摘した。
事件概要
2011年12月22日、吉祥寺駅出発のバスに乗っていた三鷹市内の市立中学教諭、津山正義さんが女子高生から「スカートの上からお尻をなでられた」とされ逮捕された事件。
車内で女子高生からにらまれているのに気付き何かこちらに非があったのかもしれないと思い「ごめん、ごめん」といった。
その言葉を聞いた女子高生から「降りましょう」と一緒にバスから降りた。
降りた後に痴漢はしていないとはっきり伝えてその場を立ち去ったがその後にバスの運転手らに取り押さえられた。
「微物鑑定」(手のひらに付着している繊維とスカートの繊維が同じかどうか判定する)では津山さんの手からスカートの繊維は検出されなかった。
再現実験をすると、スカートをさわった場合必ず手に繊維が付着した。
バスには防犯カメラが設置されており、当時の映像からは、左手はつり革につかまり、右手は携帯電話を操作している津山さんの姿が映っていた。
津山さんはリュックサックをお腹側にかけており、再現実験をすると女子高生との身長差からリュックサックがお尻にあたることがあった。
女子高生は犯行を直接見たわけではない。さわられたような気がしたのみである。
目撃証言も一切ない。
このような状況の中、2013年5月8日、裁判の結果、東京地裁立川支部倉澤千巖裁判官は「罰金40万円」の有罪とした。
「微物鑑定」でスカートの繊維が出なかった件については、「出ないこともある」とした。
左手でつり革とつかみ、右手で携帯電話を操作していた件については、「それでも不可能とはいえない」とした。
その後控訴して東京高裁で出た判決が上記の通り無罪。
感想
この事件の内容を知ると地裁の判決がお粗末すぎて、高裁の判決が至極まともかと思う。
被害者の証言のみで有罪にしてしまうとは、「疑わしきは被告人の利益に」を無視している。
どんなに疑わしくても物的証拠、状況証拠がない場合は有罪に出来ないようにしなければ、冤罪が増えてしまう。
示談金目的のやからも出てくるかもしれない。
特に痴漢冤罪は多いらしい。
もちろん痴漢をする人間が一番悪く、痴漢をされた人間は被害者だが、関係ない人間を有罪にして良いわけはない。
検察側は最高裁まで戦うのであろうか。
起訴した以上意地でも有罪としたいだろうが、あがきはみせないでほしい。
証拠改ざん事件以降信用を失っているが、さらに失望させてほしくない。
この事件を知って、「それでも僕はやってない」という映画を思い出した。
2007年1月20日に公開された映画で、多数の取材した痴漢冤罪事件の実在エピソードを散りばめた内容となっている。
この映画では、痴漢容疑で逮捕された男性が最終的に裁判で判決が出るまでを描写しているが、なるほどと思う点があった。
起訴された事件の第1審有罪率が99.98%であること
これは世界一らしい。何でもありのナチスドイツ時代の刑事裁判ですら99.5%程度であったことを考えると数値の異常性が認識できる。
つまり、日本の裁判では冤罪が生まれやすいことがわかる。もちろん検事が優秀で無実の人間は起訴していないのであれば大変望ましい結果だが、事実証拠改ざん等を行っていたことがわかっているので検事を全面的に信用することは出来ない。
しかし、裁判官は検事を信用しているようだ。検事側の主張を全面的に取り入れているからの有罪率であろう。
裁判官によって裁判に向かう姿勢が異なること
冤罪を防ぐ為に被告側の主張に真摯に向き合う裁判官もいれば、はなから検事側に立っている裁判官もいる。
取り調べ室は密室であること
強い立場の警察官と弱い立場の容疑者が密室の中でやりとりされた結果が裁判の証拠となっている。
自白強要や容疑者に不利となるような供述調書の作成が行われている。
この映画は冤罪をテーマにしているので内容が被告よりであるものの、痴漢事件の問題を明らかにしていて面白かった。
そして、今回のこの三鷹バス痴漢事件も全く同様の内容である。
1審までは映画と同様だが2審では無罪判決が出ているので、この7年間で司法も痴漢事件への対応について少しは変わってきているのかもしれない。
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